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イソトレチノインと積算量

イソトレチノインと積算量

ニキビ治療において欠かせないイソトレチノイン。

本記事では、イソトレチノイン治療の効果を最大化するための累積投与量に関する最新の研究知見をまとめました。

累積投与量と治療効果の関係

イソトレチノイン治療では、体重あたりの総投与量(累積投与量)が長期的な治療成功の鍵を握ります。従来は「0.5~1.0 mg/kg/日」の用量で16~32週間かけて累積投与量120 mg/kg以上を達成することが標準とされてきました。

しかし、2025年に報告された約2万人の患者データ解析では、累積投与量の増加に伴い再発リスクが減少し、特に120 mg/kg以上の投与で再発率が有意に低下することが確認されています。一方で興味深いことに、1日あたりの投与量(維持量)そのものは、十分な累積量さえ確保できていれば再発リスクに大きな影響を与えないことも報告されています。

つまり、高用量(1 mg/kg/日超)の短期治療でも、低用量で長期間かけた治療でも、最終的な累積投与量が同じであれば長期効果に大きな差はないと考えられます。ただし、累積投与量を過剰に増やしても効果は頭打ちになり、ある解析では220 mg/kg以上の投与では再発予防効果の追加的な向上は認められませんでした。

治療期間の選択:6ヶ月 vs 12ヶ月

標準的な治療期間は約5~6ヶ月程度で、目標累積量(120~150 mg/kg前後)に到達するよう設計されています。大規模研究でも皮膚科医が行う初回治療の平均期間は約5.6ヶ月(最終累積量132.4 mg/kg、1日最大量0.93 mg/kg)だったと報告されています。

一方、低用量でより長期間(12ヶ月以上)かけて累積量を達成する治療戦略も選択肢となります。この場合、副作用が軽減される利点がある反面、治療完了までに時間を要します。

中国からの報告では、1日0.2~0.4 mg/kgという低用量で平均13.5ヶ月かけて累積120 mg/kgを投与した患者388例の解析で、90.2%がコース終了時に完全寛解し、1年後の再発率は約10.6%と良好な結果が得られています。この研究では重症度によって治療期間に差があり、重症ニキビでは平均112日で病変が消失したのに対し、軽症~中等症では約74~84日でクリアしています。

しかし治療終了後1年間の再発率に初期重症度による有意差は見られず、十分な累積投与量を達成できれば重症例でも長期寛解が期待できることを示唆しています。

低用量療法・累積量未達の場合の効果

イソトレチノインの低用量療法(0.25~0.5 mg/kg/日程度や隔日投与など)は、軽度~中等度のニキビ患者を中心に用いられてきました。複数の臨床試験によれば、軽~中等度のニキビでは低用量療法でも標準用量療法と同等の有効性が得られることが示されています。

マレーシアからの前向き研究では、固定10 mg/日の低用量を累積90~110 mg/kgに達するまで投与した150例全員が皮疹の完全消失を達成し、平均治療期間は約24週間でした。重症例では軽症例より治療期間が長引いたものの(約33週 vs 19週)、全体の再発率は4%と極めて低く、低累積量(100 mg/kg前後)でも長期寛解が得られています。

副作用と累積量・用量の関連性

10 mg/日程度の低用量療法でもほとんど全例で唇の乾燥が報告されていますが、保湿対策で対処可能な軽度のものが多く、肝機能や脂質などの検査値異常はわずか数%に一過性に生じる程度です。一方、高用量(累積量が大きい群)では肝酵素や血中脂質の異常出現率が上昇します

ある比較研究では、累積<80 mg/kgの群で肝機能異常(トランスアミナーゼ上昇)が5~6%だったのに対し、累積>120 mg/kgでは22%に認められ、高脂血症の発生も高用量群で増加する傾向がありました。

累積投与量・1日量が高いほど副作用発現率が高く、重篤度も増すため、患者ごとに副作用と効果のバランスを考慮した投与調整が重要です。最近の報告では、120 mg/kgを超える高い累積投与は臨床的な利益が乏しい一方で副作用リスクだけを増大させ、服薬アドヒアランス低下を招きうるため推奨されないとされています。

重症度別の治療アプローチ

ニキビの重症度によって、イソトレチノイン治療の進め方や効果にも違いがあります。軽症~中等症患者では比較的低用量で十分な効果が得られることが多く、0.5 mg/kg/日程度の低用量で標準用量と同等の寛解・再発成績が得られるとの報告が複数あります。

一方、重症のニキビ(結節嚢胞性や凝集性)では、炎症や皮疹量が多いため標準ないし高用量が必要になる場合が多く、治療期間も延びる傾向があります。そのため重症ニキビでは、原則として0.5~1 mg/kg/日の用量で累積投与量120 mg/kg以上を目指す標準的戦略が推奨されます。

ただし近年では、重症例でも副作用に応じて序盤は低用量から開始し徐々に増量するなど柔軟に調整しつつ、最終的に必要累積量を達成する「テーラーメイド治療」も実践されています。実際、重症患者であっても適切に累積量を確保できれば長期予後は良好です。

まとめ:イソトレチノイン治療の最適化

イソトレチノイン治療の最適化には以下のポイントが重要です:

  1. 累積量より治療効果:副作用が大きくなるので、治療効果とニキビがない期間を重視します
  2. 個別化アプローチ: 重症度、副作用の発現状況、患者の生活環境などを考慮して1日投与量と治療期間を調整
  3. 維持期間の重視: ニキビが消失してから少なくとも2ヶ月は治療を継続することで、累積量がやや少なくても再発を防げる可能性がある。
  4. 柔軟な用量調整: 副作用が強い場合は一時的な減量や休薬を行いながら、最終的な累積量を確保する工夫が重要

これらの知見を踏まえ、イソトレチノイン治療では画一的なアプローチではなく、一人一人の状態に合わせた「テーラーメイド」の治療戦略が今後ますます重要になるでしょう。

参考文献

  1. Lai J, Barbieri JS. Acne Relapse and Isotretinoin Retrial in Patients With Acne. JAMA Dermatol. 2025.
  2. Skroza N, et al. Advantages of Tailored Isotretinoin Treatment in Moderate to Severe Acne: Real-Life Data. Front Pharmacol. 2021.
  3. Li Y, et al. The efficiency and safety of low-dosage isotretinoin therapy for Chinese acne vulgaris patients. J Cosmet Dermatol. 2024;23(3):926-930.
  4. Yap FBB. Safety and efficacy of fixed-dose 10 mg daily isotretinoin treatment for acne vulgaris in Malaysia. J Cosmet Dermatol. 2017;16(3):348-352.
  5. Rademaker M. Isotretinoin: dose, duration and relapse. What does 30 years of usage tell us? Australas J Dermatol. 2013;54(3):157-162.
  6. Rademaker M. Making sense of the effects of the cumulative dose of isotretinoin in acne vulgaris. Int J Dermatol. 2016;55(5):518-523.
  7. Sardana K, Garg VK. Efficacy of low-dose isotretinoin in acne vulgaris. Indian J Dermatol Venereol Leprol. 2010;76(1):7-13.
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