多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方のレーザー治療

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多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方のレーザー治療

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方のレーザー治療

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

こんにちは。

今回は多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)をお持ちの方が美容目的のレーザー治療を受ける際の効果や注意点についてお話しします。

PCOSの方は体毛が濃くなる、大人ニキビに悩まされる、首や脇に色素沈着が出るなどの肌トラブルに悩まれることが多く、レーザー治療に関心をお持ちの方も多いと思います。

PCOSとは?

PCOSは女性の約10人に1人が経験する女性ホルモンの乱れを特徴とする症状の総称です。

排卵が不規則になることで月経不順が起こるほか、男性ホルモンの影響で皮膚に様々な症状が現れます。

特に「多毛症」(体毛が濃く太くなる)、「ニキビ」(特に顎や頬のニキビが大人になっても続く)、「色素沈着」(首の後ろや脇の下が黒ずむ)などが代表的な皮膚症状です。

PCOSの皮膚症状にレーザー治療は効果があるの?

体毛の悩みとレーザー脱毛

PCOSによる濃い体毛に対して、レーザー脱毛は一定の効果を発揮します。

実際の研究では、複数回の照射によりPCOSの方でも毛の成長を約70%減少させることが可能だったとの報告があります。

適切な治療を行えば、見た目の改善だけでなく精神的な負担も軽減され、生活の質が向上することが示されています。

ただし、PCOSの方は男性ホルモンの影響で毛が太く濃く成長し続けるため、以下の点に注意が必要です:

  • 一般の方より多くの回数の照射が必要になることが多い
  • 通常は6回程度の治療を基本としますが、PCOSの方ではそれ以上の追加治療が必要なケースが多い
  • 効果を維持するためには定期的なメンテナンス照射が必要になる場合がある

レーザー脱毛の種類としては、アレキサンドライトレーザーや長波長Nd:YAGレーザーがIPL(光治療)と比較してより高い減毛効果を示したとの研究結果があります。

ニキビや肌荒れへのレーザー治療

PCOSの方は思春期を過ぎても持続するニキビに悩まされることが多く、これは男性ホルモンの影響で皮脂分泌が増えることが原因です。

この症状に対して、レーザーフェイシャルなどが補助的な治療として用いられることがあります。

特にニキビによる赤みにはNd:YAGレーザーなどが、ニキビ跡の凹凸にはフラクショナルCO₂レーザーなどが効果的とされています。

ただし、ホルモンバランスの乱れという根本原因を改善しないと新たなニキビが繰り返し発生するため、レーザー治療だけで完全に治すことは難しいことを理解しておくことが大切です。

色素沈着への対応

PCOSの方の中には、首の後ろや脇の下などに「アカントーシス・ニグリカンス」と呼ばれる色素沈着が見られることがあります。

これはインスリン(血糖値を下げるホルモン)への抵抗性が原因で起こることが多く、ビロード状の褐色〜黒色の変化として現れます。

この症状に対しても、長波長アレキサンドライトレーザーやフラクショナルCO₂レーザーなどによる治療が試みられており、ある程度の改善効果が報告されています。

例えば、脇の下の色素沈着に対してアレキサンドライトレーザーを数回照射した研究では、平均25%程度の色調改善が認められました。

しかし、色素沈着そのものはインスリン抵抗性に関連した症状であるため、体重管理や内科的な治療による根本対策も重要です。

また、色素沈着した部位はレーザーの熱が集まりやすく、照射によって一時的に炎症が悪化するリスクもあるため、徐々に慎重に治療を進める必要があります。

PCOSの方がレーザー治療を受ける際の注意点

ホルモンバランスとの関係

PCOSの方がレーザー治療を受ける場合、最も重要なのはホルモン治療との併用です。

特に体毛の問題に関しては、レーザー脱毛で一時的に毛が減っても、男性ホルモンの影響が続く限り、新たな毛が生えてくる可能性があります。

国際的なガイドラインでも「レーザー脱毛と並行して低用量ピルなどによるホルモン治療を行うことで、より良い効果が得られる」と推奨されています。

実際、ホルモン治療(低用量ピルやメトホルミンなど)と併用したグループでは、レーザー単独よりも良好な減毛効果が得られたという研究結果もあります。

治療効果の持続性と再発

PCOSの方にとって、「レーザー治療後の効果がどのくらい続くのか」は大きな関心事です。残念ながら、ホルモンバランスが改善されない限り、効果の持続は限定的なことが多いようです。

研究によると、レーザー脱毛により一時的に自己処理(剃毛など)の頻度が減って生活の質が向上しても、治療終了1年後以降には毛の処理頻度が元に戻ってしまうケースも報告されています。

ある追跡調査では、レーザー脱毛後6ヶ月までは大幅に改善していた患者さんの満足度が30ヶ月後には低下し、「効果を維持するには追加のレーザー治療が必要」という結論に至っています。

ニキビ治療や色素沈着の改善効果についても同様で、ホルモンバランスや生活習慣が改善されないと、再発する可能性が高いことを理解しておく必要があります。

副作用のリスク

レーザー治療に伴う一般的な副作用としては、一時的な赤みや腫れ、小さな水ぶくれ、色素沈着(色が濃くなる)または色素脱失(色が抜ける)などがありますが、PCOSの方だからといって特別に副作用のリスクが高いというエビデンス(科学的根拠)はありません。

実際、レーザー脱毛後にニキビのような発疹が出ることがありますが、PCOSの有無はこの副作用の発生率に影響しないという報告もあります。

むしろ注意すべきなのは、PCOSの方は他の治療(ニキビ治療薬など)を併用していることが多いため、それらとの相互作用です。

専門家の見解とガイドライン

海外の権威ある医学会からは、PCOSの方の皮膚症状に対して以下のような推奨がなされています:

  • 米国内分泌学会:「多毛症の治療として、レーザー脱毛を推奨する。効果を高めるために外用薬の併用も検討する」
  • 国際PCOSガイドライン:「PCOS患者では一般の方より多くのレーザー照射回数が必要になる可能性が高い」「レーザー脱毛と低用量ピルの併用は、レーザー単独より効果的である」
  • イギリス・カナダのガイドライン:「生活習慣の改善やホルモン治療なしに美容治療だけ行っても効果は一時的である」

総じて、専門家の間では「PCOSの根本治療(ホルモンバランスの改善)と症状対策(レーザーなどの美容治療)の両方が必要」という見解で一致しています。

まとめ:PCOSの方へのレーザー治療のメリットとリスク

PCOSの方に対するレーザー治療は、適切に行えば安全で効果的ですが、ホルモンバランスの乱れに起因する限界もあることがわかりました。

メリット:

  • 多毛症が大幅に改善し、精神的負担が軽減される
  • ニキビ跡や色素沈着が改善し、外見上のコンプレックスが解消できる
  • 低用量ピルなどのホルモン治療と併用することで、より良い効果が期待できる

制約・注意点:

  • 一般の方より多くの照射回数が必要になることが多い
  • ホルモンバランスを整える治療を併用しないと、効果が一時的になりがち
  • 定期的なメンテナンス治療が必要になる可能性が高い
  • 他の治療薬(特にニキビ治療薬)との相互作用に注意する必要がある

PCOSの方がレーザー治療を検討される場合は、皮膚科医や婦人科医とよく相談し、ホルモン治療と美容治療を組み合わせた総合的なアプローチを取ることをお勧めします。現実的な期待値を持ち、長期的な管理計画を立てることで、満足のいく結果を得られる可能性が高まります。

当クリニックでも、PCOSの方の肌トラブルに対応したレーザー治療を提供しています。気になる方は、まずはご相談ください。ホルモンバランスの状態も考慮した上で、最適な治療プランをご提案いたします。


参考文献:

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  4. Martin KA, et al. Evaluation and Treatment of Hirsutism in Premenopausal Women. J Clin Endocrinol Metab. 2018.
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  6. Tan K, et al. Laser and Light-Based Therapies for Hirsutism Management in Women With Polycystic Ovarian Syndrome: A Systematic Review. JAMA Dermatol. 2024.
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